地方の魅力を高めるための「祭り」~地方に移住して地域を盛り上げる方法とは~

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地方から都会へ人口が集中することにより、地方の活力が失われ、少子高齢化が進行し、最終的に地方に人がいなくなる・・・この事態を避けるためには、地方に住む人を根本的に増やすしか方法はありません。

その地域により多くの人が移り住んでもらうためには、その地方に興味や関心を持ってもらい、そこから関係を強め移住に繋げていくという手段も有効です。

地方ならではの資源に着目したとき、非常に有効なものとして、「祭り」を挙げることができます。どの地域にもその地域ならではの「祭り」がありますが、それを地域の活性化に活用しては如何でしょうか。

先に移住を果たした人にとっても、その地域の「祭り」の活用を契機としてその地域を盛り上げることで、地域住民の誇りを醸成する担い手になることも可能です。
今回は、都会から地方への移住を進めるための方策として、「祭り」の活用について解説します。

都会と地方に関する若者の意識

まず、「祭り」について述べる前に、地域の活性化や都会からの地方への移住に必要なキーワードとして、「娯楽」があることを説明します。

若者の地方に対する意識について、少し前のデータですが、公益財団法人日本財団が「地方創生」をテーマに29回目の18歳意識調査を2020年8月上旬に実施しました。この調査は、全国の17歳~19歳男女合計1,000人にインターネットでアンケートを実施したものです。
なお、2020年ということで、コロナ禍の最中にあるアンケートという点はご留意ください。

まず、都会と地方どちらで暮らしたいかを聞いたところ、都会と回答した人が全体の56.5%となっています。なお、同様の調査を2019年にも行っており、その際は61.3%だったようですので、過半数以上の若者は都市部での生活を希望していることが分かります。

なお、この調査では、暮らしたい場所を答えるに当たり、「新型コロナウイルスの感染拡大を意識した」とする回答は43.8%でした。コロナ禍で密となりにくい地方への移住を検討した人が多かったという側面はあるかもしれません。

加えて、都市部で暮らしたい理由として、以下の回答がまとめられています。「生活がしやすい」「娯楽が多い」「就労の選択肢が多い」「多様なチャンスがある」などが上位に挙がっていました。

一方、地方で暮らしたい人にその理由を聞いたところ、以下のとおりでした。「自然環境が豊か」「生活がしやすい」「治安が良い」「育った場所だから」などが上位に挙がっていました。

 出典:日本財団_第29回18歳意識調査「テーマ:地方創生」について報告書

地方の魅力として、自然環境が豊かである点に異論がある人はいないと思います。都会の第一位と地方の第二位に「生活がしやすい」が挙げられており、都会・地方いずれも生活がしやすいと感じられる面を有していることも分かります。

大きく異なる点として、都会の第二位に「娯楽が多い」とあり、この点、地方では第八位と低迷しています。娯楽の中身については本調査では明示されていませんが、一般的なアミューズメント施設が地方に少ないのは明らかでしょう。

この「娯楽」というキーワードを充実させることが、地方の魅力を高める方策の一つではないかと思います。その点、地方に古くからあった娯楽として、「祭り」を有効に活用することで、小コストで大きな効果を挙げることができるのではないでしょうか。

地方ならではの娯楽「祭り」について

祭りとは、古くは自然や先祖を崇拝するためのもので、自然とともに生きるため、集落ごとに大切に実施され、受け継がれてきました。
非常に小さな集落単位で営まれるものもあれば、町単位の大きな集団で営まれるものもありますが、年に一定の期間、重要な祭祀として地域の住民の手により行われることが一般的です。
祭りには、その地域ならではの特徴があり、それが地域の祭りの強みとなります。

時代を越えて長きにわたって継承されてきた祭りも多く、それは地域の大切な無形文化財と言えます。
国においても伝統的な祭りを重要な無形文化財と認めており、2016年には、ユネスコ無形文化遺産保護条約「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に、日本の伝統的な祭りの重要な資産である「山・鉾・屋台行事」を登録しました。

参考:文化遺産オンライン

祭りによっては、その神や自然など祭祀機能のほか、小規模な花火大会を行ったり、出店が立ち並んだりといったことも一般的です。ある意味で、娯楽と祭祀が共存しているといえます。

地方の祭りは、その地域に住む人々が代々継承してきましたが、少子高齢化の進展により、その継承者が不足しています。
その中で、地域住民のみならず、商店街などと連携し観光なども視野に取り組んだ祭りは規模も大きくなり、地域の誇りとして現在も活発に実施されている事例が多いです。

例えば、長崎の名物となっている「長崎くんち」や「青森ねぶた祭」は、地域の商工会などと連携し、祭りを出し物として保存し観光に活かしており、地域住民の誇りとなっています。

長崎伝統芸能振興会は、長崎市の経済発展と観光事業振興の一翼を担う、伝統ある年中行事“長崎くんち”(神事を除く)の円滑なる運営と振興を促進し“演し物(だしもの)”の保存育成を図ることを目的としています。その一環として中央公園に踊場を開設・運営し、多くの市民や観光客の方々に奉納踊をご覧頂いています。

https://nagasaki-kunchi.com/about/

参考:長崎くんち

青森ねぶたが、現在のように大型化したのは戦後です。その歩みは、観光化という大きな流れに乗り、どんどん巨大化してきました。

https://www.nebuta.jp/know/changes.html

参考:青森ねぶた祭

祭りを活かす方法

このように、祭りの力を使い、地域活性化を目指すことは地域の再生にもつながります。その一方、地域外の人々の来訪を踏まえ、どこまで地域の祭りを一般の人々に開示し観光化するかが論点です。

この点、岩手県奥州市の寺で1000年以上続くとされる祭、「蘇民祭」は担い手不足から17日夜が最後の開催となり、惜しまれながら2024年2月に歴史の幕を閉じたことが報道され、大きな話題となりました。

多くの地域で祭りそのものの継承が難しくなる中、地域外の人に祭りの様子を広くオープンにし、むしろその祭りを楽しんでもらうための方法を検討・実施することでその地方への来訪を促し、地方のファンになってもらう効果もあります。

そのためには、

  1. 祭りそのものをどこまで地域の文化財として活用するか
  2. その祭りの魅力をPRする

ことが必要です。

1については、まず、祭りの主催が地域の神社・寺のほか、その氏子であることも多いことから、祭りに外部の来訪者を招くことのメリットを丁寧に解き、受け入れてもらうことが重要です。
そのためには、まず祭りの参加者として手伝ったり(神輿を扱う祭りであれば担ぎ手など)、開催側に回って一緒に祭りを取り仕切ったりすることが近道かもしれません。

2については、自分たちでできることとして、PR用の特別なホームページの作成が考えられます。
複雑なホームページを作る必要はありません。企業のPR広告に使われるランディングページと呼ばれるホームページを作り、祭りの始まる前から祭り当日までPR用として公開してはどうでしょうか。

また、祭りの開催資金を集めることを目的としたクラウドファンディングの実施も有効です。クラウドファンディングを行うことでその祭りに対する一般の方の注目が集まり、その祭りを訪れたくなるかもしれません。

いずれにしても、開催する側との連携と、その祭りのPRを充実させることでその地域を訪れる人が多くなれば、その地域のファンが増え、その後も地域を訪れたり関係性を深めることに可能性が高くなります。

なお、祭りのPRを充実させることにより、その地域から他の地域に移住した人たちの興味関心を惹くことにもなり、一度途絶えた地域との関係が復活したり、その後のUターンに繋がる可能性もあります。

祭りへの行政の支援について

伝統的な祭りは日本の重要な無形文化財です。このため文化庁では、全国の祭りを保護する地方自治体に対し、補助事業を行っています。

この補助金は、

  • 各地方公共団体において、地域活性化に資する特色ある総合的な取組に関する計画を策定
  • 補助事業者が当該計画に基づき実施される補助対象事業に関する応募書類を作成
  • 文化庁に提出

参考:文化庁 令和6年度地域文化財総合活用推進事業について

の流れで申請します。

このほか、例えば一般財団法人自治総合センターは、宝くじの収益金を財源として、「コミュニティ助成事業(地域の芸術環境づくり助成事業)」に対し助成を行っています。
伝統的な祭りについてもこの助成対象とされており、その実行委員会が祭りに使用する備品等の購入費の補助を受けることが可能です。
なお、申請者は地方自治体です。

参考:一般財団法人自治総合センター コミュニティ助成事業

地域の祭りを活用するための資金確保策として補助を受ける場合、地方自治体の関与が必要となりますので、まずは自治体の担当者に相談してみてください。

まとめ

地方の魅力を高めるための方策として、地域の祭りの活用について解説しました。

現在も盛大に行っているところもあれば、少子高齢化によりその継続が難しくなっているところもあります。
継続が難しい祭り、特に伝統的な祭りについて、これを観光資源と捉え外部の方にアピールする取組を行うことで地域外の関心を高め、地域外の力を借りながら存続させる効果も期待できます。

地域の祭りの活用に取り組むことで、観光の活性化から地方への移住、かつて住んでいた住民のUターンまで考えられます。
ぜひ地域の祭りを重要な資源と捉え、地域の貴重な魅力として発信してください。

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