地域おこし協力隊の終了後の進路の話

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国が進める地域おこし協力隊。最大3年間で地域の課題に取り組みつつ、地域との交流を深め、その後の定住に繋げていくことを大きな柱とした事業です。制度としては、国の補助を受けつつ自治体が自ら企画して募集する仕組みとなっており、自治体ごとに地域おこし協力隊にお願いしたい活動内容は様々です。
では、地域おこし協力隊の任期終了後、隊員だった人たちはどのような行動をとる予定なのでしょうか。定住に繋がるのでしょうか。今回は、地域おこし協力隊の任期終了後の進路について解説します。
一般社団法人移住・交流推進機構JOINが実施した「地域おこし協力隊の現状と課題~令和4年度地域おこし協力隊アンケート集計結果の概要~」より引用します。この調査は毎年行われており、前年度との比較から、隊員の意向のトレンドが分かります。
なお、JOINのサイトには様々な調査レポートが掲載されていますので、興味があればぜひ。
 → 一般社団法人移住・交流推進機構JOINの調査レポート

地域おこし協力隊の現状

まず、地域おこし協力隊として活動している人たちについてです。
地域おこし協力隊に応募した理由(複数回答可)は、「自分の能力や経験を活かせると思ったから」が約6割と最も多く、次いで、「地域の活性化の役に立ちたかったから」(約5割) 「活動内容がおもしろそうだったから」(約4割)の順となっています。地域活性化への積極的関与や自己実現に関する理由が多くみられます。

次に、現在の任地を選んだ理由(複数回答可)は、「活動内容が魅力的であったから」が約5割と最も多く、次いで、「地域としてよいイメージを持ったから」(約4割)、「現在の任地への何らかの繋がりがあったから」(約3割)の順となっています。任地の地域おこし協力隊の活動内容や、地域そのものに魅力を感じていることが分かります。

現在地域おこし協力隊として取り組んでいる活動(複数回答可)は、「地域コミュニティ活動」(地域行事、集落活動支援、住民活動支援等)が約4割と最も多いようです。次いで「地域や地域産品の情報発信・PR」が約3割と多くなっています。地域の活動に参加しつつ、地域外の視点から地域のPRを行う姿が見て取れます。

地域おこし協力隊に応募する人たちは、そもそも見知らぬ地域に飛び込んで活動してみようというくらいですので、積極性のある人が多いのではないかと予想されますが、そのような人たちが地域の活動に参加することで、新しい風を吹かせているのではないかと思います。 

任期終了後について

それでは、任期終了後について、地域おこし協力隊に参加している人たちは、どういう進路を考えているのでしょうか。
調査では、任期終了後の意向も聞き取っており、定住予定者が約5割、非定住予定者が約1割、未定・不明者(現時点ではわからない」)が約4割、となっています。半分の人たちが引き続き定住する意向を持っているということで、一定程度、地域おこし協力隊の目的である地方への移住の促進につながっているのではないかと思います。

任期終了後に定住を予定している場合、定住にあたっての仕事の意向は、「起業したい」が約6割を占めており、定住を予定する隊員の半数以上は、起業意向を持つ傾向が続いています。
 また、「新規就農したい」はR3調査から増加し約2割となっている一方で、「民間の企業・団体に就職したい」はR3年度から減少し約1割となっています。就農も引き続き一定程度のニーズがあるようです。

気になるのは、起業や就業先についてですが、任期終了後に定住を予定し、起業または就職の意向を有する場合、希望する事業分野(複数回答可)は、起業意向者においては「観光ツアー企画・実施、観光ガイド等」「宿泊業」「まちづくり等のコンサルタント、プロデューサー、コーディネーター」がいずれも約3割であり、前年に引き続き観光、サービス分野での起業意向が高いようです。観光客や地域住民を対象とした「飲食サービス業」約2割となっています。

就職意向者においては、「農林漁業関連団体」が約3割と最も多く、次いで「まちづくり等のコンサルタント、プロデューサー、コーディネーター」が約3割となっています。

起業の意向を有する場合の起業にあたっての課題は、「初期投資や開業資金の確保」約8割と最も多くなっています。「財務知識や経営知識など事業計画を立案する知識の習得」約6割となっており、資金面に加え、財務・経営等の知識の習得も課題となっています。

まとめ

地域おこし協力隊として地域に大いに貢献した後の進路について、まとめてみました。引き続き定住したいという人が半数であり、地域にとってプラスの成果でしょう。また、起業したいという人が隊員の過半数となっており、地域に新しい産業が生まれる結果に繋がっています。
起業する業種としては、観光業や宿泊業が多いようで、現地の魅力を外の人に伝えられる仕事を希望していることが印象的です。

地域おこし協力隊をきっかけに新たに地域の一員となった人はその地域に対して客観的な視点を持っていると思いますが、そのような人が地域の魅力発信を行うことで、地域内の人では気づけない地域の魅力を地域外の人に発信することに繋がると思います。
さらに、同じ地域に次の地域おこし協力隊員がやってくることになれば、先輩からその経験を継承でき、地域にとって好循環につながるのではないでしょうか。

なお、資金面に加え、財務・経営等の知識の習得が課題となっており、資金確保への手助け、知識習得の場の確保などについて、トータルでサポートできるアドバイザーの存在が必要なのかもしれません。

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