地方で事業を始める~移住先でNPO法人を作る方法について~

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地方への移住の理由は様々ですが、その地域のために、非営利の活動を行いたいという人も多いのではないかと思います。そんな時に活用できる仕組みとして、非営利活動法人(NPO法人)を設立する、という方法があります。

今回は、非営利活動法人を作ることについて、解説していきます。

なお、事業の始め方として、通常の会社を作る手順等については、別のページでご紹介していますので、参照してください。

NPO法人とは

NPO法人とは「Non-Profit Organization」又は「Not-for-Profit Organization」の略称で、様々な社会貢献活動を行い、団体の構成員に対し、収益を分配することを目的としない団体で、法人格を取得した法人のことです。法的には、特定非営利活動促進法に基づき法人格を取得した法人です。

法人格を持つことによって、団体名義での契約締結や土地の登記などにおいて、団体自身の名義を用い権利義務の関係を処理することができるようになります。

NPO法人を設立するためには、所轄庁に申請をして設立の「認証」を受けることが必要です。認証後、登記することにより法人として成立することになります。

NPO法人の認証を行う所轄庁は以下のとおりです。所轄庁が監督権を持っています。

NPO法人の所在地申請先
2以上の都道府県に事務所を置くNPO法人「主たる事務所」の都道府県
1つの政令指定都市内のみに事務所を置くNPO法人当該政令指定都市
②以外で1つの都道府県内に事務所を置くNPO法人当該都道府県

NPO法人を作るメリット

NPO法人となるは行政による認証を受ける必要があることから、個人として地域のために活動するより、社会的な信用度が高いといえます。

加えて、会社と異なりNPO法人は、法人税法上の公益法人等とみなされ、収益事業を行わない場合は非課税となります(収益事業を行う場合には法人税の申告を要します)

地方自治体に申告納付する必要がある法人住民税においても、収益事業を行わない法人の場合、自治体によっては均等割が減免(かからない)されている場合があります。例えば東京都では収益事業を行わないNPO法人の法人住民税均等割を減免しています(参照:東京都主税局
 通常7万円以上申告納付する必要がある均等割が0となりますので、少しでも節約して事業を行いたいのであれば、メリットとなるでしょう。

NPO法人の設立の流れ

NPO法人を設立するためには、以下の手順を踏む必要があります。

  • 書類の提出

法令で定められた書類などを添付した申請書を、以下の所轄庁に提出し、「認証」を受けることが必要です。申請書に添付する書類は下記で説明します。

  • 公表

所轄庁は、提出された書類の一部を、申請書を受理した日から2週間、公衆の縦覧に供するとともに、遅滞なく、申請があった旨、申請のあった年月日及び特定添付書類に記載された事項を、インターネットの利用により公表することとなります。

  • 認証又は不認証の決定

所轄庁は、正当な理由がない限り、縦覧期間の2週間経過後、2カ月以内に認証又は不認証の決定を行い、書面により通知します。なお、その確認は書面審査によって行うことが原則とされています。

  • 設立の登記

設立の認証後、申請者が、主たる事務所の所在地において設立の登記を行うことで法人が成立します。設立の登記は、設立の認証の通知があった日から2週間以内に行う必要があります。

  • 設立登記後の届出

登記により法人として成立した後、遅滞なく、当該登記をしたことを証する登記事項証明書及びNPO 法人成立時に作成した財産目録を添えて、その旨を所轄庁に届け出ます。
なお、設立の認証を受けた者が設立の認証があった日から6カ月を経過しても登記をしないときは、所轄庁が認証を取り消されることがあります。

申請書について

NPO法人を設立するためには、所轄庁の条例で定めるところにより、次の1~10の書類を添付した申請書を所轄庁に提出し、設立の認証を受ける必要があります。

  1. 定款
  2. 役員名簿
  3. 役員の就任承諾書及び誓約書の謄本
  4. 役員の住所又は居所を証する書面
  5. 社員のうち 10 人以上の氏名及び住所又は居所を示した書面
  6. 認証要件に適合することを確認したことを示す書面
  7. 設立趣旨書
  8. 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
  9. 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
  10. 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書

認証の基準

所轄庁は、NPO法人を設立しようとする者からの申請について、次の①~④の基準に適合すると認められるときには、その設立を認証しなければならないとされています。

① 設立の手続並びに申請書及び定款の内容が法令の規定に適合していること

② 当該NPO 法人が特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、営利を目的としないものであって、次のイ及びロのいずれにも該当し、その活動が、次のハ~ホのいずれにも該当する団体であること
 イ 社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと
 ロ 役員のうち報酬を受ける者の数が、役員の総数の3分の1以下であること
 ハ 宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とするものでないこと
 ニ 政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするものでないこと。
 ホ 特定の公職の候補者若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対することを目的とするものでないこと。

③ 当該申請に係るNPO法人が次のイ及びロに該当しないものであること
 イ 暴力団
 ロ 暴力団又はその構成員若しくは暴力団の構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制の下にある団体

④ 当該申請に係るNPO法人が10人以上の社員を有するものであること

特定非営利活動とは、以下の①~⑳に掲げる活動であって、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものです。
① 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
② 社会教育の推進を図る活動
③ まちづくりの推進を図る活動
④ 観光の振興を図る活動
⑤ 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
⑥ 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
⑦ 環境の保全を図る活動
⑧ 災害救援活動
⑨ 地域安全活動
⑩ 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
⑪ 国際協力の活動
⑫ 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
⑬ 子どもの健全育成を図る活動
⑭ 情報化社会の発展を図る活動
⑮ 科学技術の振興を図る活動
⑯ 経済活動の活性化を図る活動
⑰ 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
⑱ 消費者の保護を図る活動
⑲ 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
⑳ 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

税制上の優遇措置について

NPO法人のうち、直前の2事業年度において一定の基準を満たすものに該当し所轄庁の「認定」を受けた法人は、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)となり、税制上の優遇措置を受けることができます。

具体的には、個人や法人が認定NPO法人に寄附した場合、所得税の計算において、寄附金控除または税額控除のいずれかを選択して確定申告を行うことにより、所得税の控除を受けることができます。

また、都道府県または市区町村が条例で指定した認定NPO法人等に個人が寄附した場合、個人住民税の計算において、寄附金税額控除が適用されます。

参照:個人が認定・特例認定NPO法人に寄附した場合

参照:法人が認定・特例認定NPO法人に寄附した場合

なお、設立後5年以内のNPO法人のうち、運営組織及び事業活動が適正であって特定非営利活動の健全な発展の基盤を有し公益の増進に資すると見込まれるものにつき、一定の基準に適合した場合は、税制上の優遇措置が認められる「特例認定」を1回に限り受けることができます。

  • 認定を受けようとする場合

認定を受けようとするNPO法人は、以下の1~3の書類を添付した申請書を所轄庁に提出し、認定を受けることとなります。

  1. 実績判定期間内の日を含む各事業年度の寄附者名簿
  2. 認定の基準に適合する旨を説明する書類及び欠格事由に該当しない旨を説明する書類
  3. 寄附金を充当する予定の具体的な事業の内容を記載した書類

※ 実績判定期間とは、認定を受けようとするNPO法人の直前に終了した事業年度の末日以前5年 (過去に認定を受けたことのないNPO法人の場合は2年) 内に終了した各事業年度のうち、最も早い事業年度の初日から当該末日までの期間をいいます。

欠格事由とは、認定又は特例認定を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない法人など、認定を受けることが適切でないと判断される事由です。内閣府のHPに具体的な内容が掲載されています。

参考:内閣府NPOホームページ_欠格事由

まとめ

NPO法人の設立について、解説しました。仲間と共に非営利活動を行い地域に貢献したい場合、税制上のメリットを享受できるNPO法人として活動することも選択肢かと思います。

 仕組みなどについては、都道府県のホームページなどにも詳細が記載されています。所轄庁は以下にまとめられていますので、参考にしてみてください。

参照:内閣府NPOホームページ_所轄庁一覧

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