障害福祉サービスは、都市部のみならず地方でも非常にニーズが高い事業です。
また、空き家対策としても障害福祉サービスに関心が高まっています。
障害福祉サービスのうち、共同生活援助(グループホーム)については、障害福祉サービス全体総額に占める割合は1割程度であり、徐々にその規模が大きくなってきており、今後もニーズは拡大していくものと思われます。
今回は、共同生活援助(グループホーム)を事業として始める方法について解説します。
Contents
共同生活援助とは
障害のある方に対して、主に夜間において、共同生活を営む住居における相談、入浴、排せつまたは食事の介護、その他の日常生活上の援助を実施します。
このサービスでは、孤立の防止、生活への不安の軽減、共同生活による身体・精神状態の安定などが期待されています。
共同生活する住居ごとに1つ以上のユニットが必要です。1ユニットあたりの入居定員は2人以上10人以下とされています。
また、住居の定員は原則1人です。また、居室面積にも要件があり、収納設備を除き7.43㎡です。
- 対象者
障害のある方
(身体障害のある方については、65歳未満の方、または65歳に達する日の前日までに障害福祉サービスもしくはこれに準ずるものを利用したことがある方に限ります。)
- サービスの内容
共同生活を営む住居において、主に夜間に相談、入浴、排泄または食事の介護、その他の日常生活上の援助を行います。
- 利用料
利用者とその配偶者の所得に応じた自己負担の上限月額があります。
(18歳未満の場合は保護者の世帯の所得に応じた自己負担の上限月額があります)
食材費、光熱水費、居住費などについての実費負担があります。
この事業を始めるためには、都道府県(または政令指定都市、中核市)に申請し、事業所として指定(事業を始めることの許可)を受ける必要があります。
- グループホームの種類
(1)介護サービス包括型・・・介護サービスを事業所が提供します。生活支援員を配置します。
(2)外部サービス利用型・・・介護サービスを受託居宅介護サービス事業者が提供します(事業所が契約する形式です)。
(3)日中サービス支援型・・・常時介護を要する方に対し、昼夜を通じて介護サービスを事業所が提供します。
- 主な基準など
指定基準は自治体によって若干の違いがありますが、原則的には以下のとおりです。
設備の基準 | 内容 |
---|---|
事業所【定員:4人以上】 | 1以上の共同生活住居が必要。 複数の共同生活住居を設置する場合は、30分程度で移動できる範囲内とすること。 |
立地 | 「病院」、「障害者支援施設」等と同一敷地・隣接地でないこと。 ※住宅地又は住宅地と同程度に家族や地域住民との交流の機会が確保される地域の中にあること。 ※グループホームは住まいの場であるため、日中活動事業所との位置関係について配慮すること。 |
共同生活住居【定員:2人以上10人以下※】 | 1以上のユニットを有する1つの建物のこと。 ※既存建物(例:寮として建てられた建物等)を活用する場合は、2人以上20人以下の取扱いが可能。 ※入居定員8人以上の共同生活住居は、基本単位数の95%又は90%の減算。 |
ユニット【定員:2人以上10人以下】 | 居室及び居室に近接して設けられる相互に交流を図ることができる設備により一体的に構成される生活単位。 |
必要設備 | 定員分の居室((個室)収納設備を除き7.43㎡以上・収納設備必須)、居間、食堂、風呂、トイレ、洗面所、台所 等 |
人員の基準 | 配置基準 | 注意事項 |
---|---|---|
管理者 | 1人 | 常勤で、管理業務に従事 (支障がない場合、他の職務との兼務可) |
サービス管理責任者 | 利用者30人に1人以上 | 定員20人以上:常勤専従(努力義務) 定員20人未満:非常勤可 (他の職種と兼ねる場合は時間を分けること) |
世話人(家事援助) | 利用者6人に1人以上 (日中サービス支援型は利用者5人に1人以上) | 非常勤可 (他の職種と兼ねる場合は時間を分けること) |
生活支援員(介護) | 利用者の障害支援区分に応じて常勤換算でイ~ニの合計数以上 イ 障害支援区分3の人数÷9 ロ 障害支援区分4の人数÷6 ハ 障害支援区分5の人数÷4 ニ 障害支援区分6の人数÷2.5 | 非常勤可 (他の職種と兼ねる場合は時間を分けること) ※外部サービス利用型は不要。代わりに受託居宅介護サービス事業者と契約を結ぶ必要がある。 |
夜間支援従事者 ※日中サービス支援型は必須 | 夜間及び深夜の時間帯を通じて1人以上 | 介護サービス包括型及び外部サービス利用型は任意。配置すると加算対象になる。 日中サービス支援型は共同生活住居ごとに夜勤必須(宿直不可)。 |
指定を受けるには
自治体によって指定申請までの流れに少しの違いはありますが、概ね以下の流れとなります。
・事前説明会への出席
・市町村への事前相談
・事前協議
・指定申請書類の提出
事前説明会への出席
説明会において、指定申請に必要な手続きや他法令の情報、物件を検討する際の注意事項や必要な設備、必要職員の基準及び必要書類等についてあらかじめ説明を受けます。
自治体にもよりますが、新規に事業を始める場合、半年前までなど、かなり余裕をもって説明会に参加することを求められています。
市町村への事前相談
都道府県への事前協議の前には、開設を予定している市町村の障害福祉の担当部署に対し、障害福祉計画に合致しているか相談を行う必要があります。
※障害者総合支援法の改正により、令和6年度からは市町村の意見を勘案し指定に条件を付すことができるようになります。
事前協議(平面図に関する相談)
土地や建物を決める前に、検討中の物件の平面図等を都道府県に提出し、事前協議します。
建築物については、消防法や建築基準法、都市計画法その他の法律の基準を満たす必要があります。計画を進める前に、それぞれの関係機関へ相談した方が良いでしょう。関係機関は主に以下のとおりです(相談が必要ない場合もあります)。
①障害者総合支援法(市町村の障害福祉の担当部署:市町村の障害福祉計画に合致しているかどうか)
②消防法(消防署:火災報知設備、火災通報装置、スプリンクラー等の消防用設備の設置等)
③建築基準法(建築安全センター、市町村(同法の所管部署))
※検査済証(確認済証、建築台帳記載事項証明書、建築計画概要書等)
④都市計画法(市町村(同法の所管部署))
⑤バリアフリー法(市町村(同法の所管部署))
⑥農地法(農業委員会)
➆給食施設等の届出(保健所)
⑧労働基準法(労働基準監督署)
概ね事業開始の3か月前を目途に事前協議を完了させます。
指定申請書類の提出
原則として、対面での事前確認を必須とする自治体が多いです。必要な書類は主に以下のとおりです。
提出書類の審査
自治体によりますが、審査に要する期間はおおむね1~2か月です。審査にかかる期間は自治体によって定められています。なお、修正が必要な場合、さらに審査期間は延びます。
審査をパスすると、自治体から指定通知書が発行されます。当然ですが、この通知書を受け取る前に事業を開始してはいけません。
まとめ
障害福祉サービスのうち、共同生活援助(グループホーム)の始め方について解説しました。
指定の基準については、自治体(都道府県など)によって多少の違いがあり、また、事前相談を必須としている自治体が大半です。まずは自治体のホームページなどで要件を確認しつつ、必ず自治体に相談するようにしましょう。
なお、障害福祉サービス全般について、以下の記事で解説しています。