地方への移住の理由は様々ですが、その地域のために、非営利の活動を行いたいという人も多いのではないかと思います。そんな時に活用できる仕組みとして、第一に非営利活動法人(NPO法人)を作る方法がありますが、これ以外に、一般社団・財団法人を設立する、という方法があります。
今回は、社団・財団法人を作ることについて、解説していきます。
なお、NPO法人を含めた非営利法人については以下の記事で解説しています。
社団・財団法人について
まず、現在、「社団法人」「財団法人」という名称を付けた法人は存在しません。通常の設立方法で作ることができるのは「一般社団法人」と「一般財団法人」で、特に認可を受けると「公益社団法人」と「公益財団法人」となることができます。
かつて、「社団法人」「財団法人」は公益法人とされ、行政が自ら公益性を判断し設置していました。しかし、行政が恣意的に公益法人を作り、不必要な補助金がその公益法人に流れ込む事例が多くみられたことから、公益法人制度の改革が行われ、2008年に、法人の設立手続き(登記)で「一般社団法人」と「一般財団法人」を作れるようにするとともに、それとは別に、特に公益性があると認定できる法人を「公益社団法人」と「公益財団法人」とすることができる仕組みとしました。
「公益社団法人」と「公益財団法人」は、その公益性にかんがみ、税制上その他で優遇される仕組みとなっています。
一般社団法人・一般財団法人について
一般社団法人・一般財団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立された社団法人・財団法人のことをいいます。一般社団法人・一般財団法人は設立の登記をすることによって成立する法人です。
一般社団法人と一般財団法人の違いについてですが、一般社団法人は「一定の目的を持った人の集まり」に対して法人格を付与するものであり、一般財団法人は「一定の目的のために集められた財産」に法人格を付与するものです。簡単にいえば、人に着目しているのが社団、財産に着目しているのが財団、といえます。
一般財団法人と一般財団法人の違いについては、以下にまとめられています。
登記のみで設立でき、この点は通常の株式会社等の営利法人と同じです。他方、株式会社等と異なり、定款で、剰余金や残余財産の分配を社員や設立者が受ける権利を付与することはできません。
行政が関与せず自立的な運営が行われることを前提としているため、最低限の機関やガバナンス(監事の設置など)に関する事項のみ法律で規定されています。
公益社団法人・公益財団法人について
公益目的事業を行うことを主たる目的とするなどの一定の基準に適合している一般社団法人・一般財団法人は、行政庁(国または都道府県)から公益認定を受けることにより、公益社団法人・公益財団法人となります。
法人の区分 | 行政庁 |
---|---|
① 二以上の都道府県の区域内に事務所を設置するもの ② 公益目的事業を二以上の都道府県の区域内において行う旨を定款で定めるもの | 内閣総理大臣 |
上記①及び②以外の法人 | その事務所が所在する都道府県の知事 |
認定の流れは以下のとおりです。
設立の流れと留意点
上記のとおり、公益法人となる前の段階として、一般社団法人・一般財団法人を設立する必要があります。
基本的には、通常の法人設立の流れと同様です。法人設立の流れは別ページを参照してください。
参照:地方で事業を始める~移住先で会社を作る方法について~
なお、株式会社等との相違点は以下のとおりです。
要件 | 一般財団法人 | 一般財団法人 | 株式会社 |
---|---|---|---|
設立に必要な人数 | 2名以上 | なし | 1名以上 |
資本金(財産) | なし | 300万円以上 | 1円以上 |
利益の分配(定款への記載) | できない | できない | できる |
一般社団法人・一般財団法人の設立で異なる点は「営利か非営利か」です。事業を営み得た収益を、最終的に法人を構成する人(社員など)に分配できないことになりますので、そもそも事業を行って利益を個人に分配する意向がある場合、一般社団法人・一般財団法人ではなく、通常の法人(株式会社等)を作り、事業を行う方が良いでしょう。
ただし、一般社団法人・一般財団法人で非営利の場合、税制面での優遇などがありますので、例えば地域のための活動を行う際、何らかの組織体が必要な場合に、一般社団法人・一般財団法人を選択することになるでしょう。
なお、非営利法人としてNPO法人の設立を選択することもできます。NPO法人の設立は以下を参照してください。
参照:地方で事業を始める~移住先でNPO法人を作る~
NPO法人は実質的に非課税となる可能性が高く、少ない経費で非収益の事業を営むことができます。
ただし、一般社団法人・一般財団法人のように監事などが必置となっておらず、ガバナンス面で弱いと捉えられやすいため、融資などの面では不利となる可能性があります。
今後の事業展開を踏まえ、法人形態を選択しましょう。
まとめ
今回は、一般社団法人・一般財団法人の作り方について解説しました。法人の設立には、印紙税や公証人の認証などで、どうしても費用がかかりますので、まだこれから事業を始めるという場合、どの法人形態を選択するか、悩むところかと思います。
行いたい事業に関わる関係者や行政、行政書士や税理士などの専門家の意見も聞いて、設立した方が良いかと思います。
ぜひ良い選択をし、地方のために活躍することを願っています。