【民泊業】を起業する ~移住先で民泊業を営む方法について その①~

仕事

地方へ移住した後、就きたい仕事としてよく挙げられるのが、観光業です。
一般的に観光業とは、旅行業、宿泊業(旅館業のほか、民泊を含む)、飲食業、アミューズメント産業、土産品産業、交通産業などの幅広い分野を包含した産業を指します。
かなり様々な業種が含まれますが、地方で観光に関わる仕事に就く場合、民泊などを含めた宿泊業、観光客などを想定した飲食業、地域で旅行ツアーを企画する旅行業などがメインとなると思います。
就職先としてであれば、それぞれを営む企業に就職することになりますが、自ら会社を立ち上げたりする場合、行政などから許認可を受ける必要があります。
今回は、観光業のうち、民泊業を営む場合に必要な手続きを解説します。

民泊業の定義

民泊とは一般的に、住宅(戸建てのほか、マンションも含む)の全部又は一部を活用して、旅行者等に宿泊サービスを提供することを指します。コロナ禍が明け、円安等を背景に外国人旅行者の増加を受け、民泊を行う個人、法人が増加しています。

地方においても、少子高齢化等を理由とする空き家の増加、気軽に宿泊したい旅行者のニーズの高まり、旅館業等よりは負担感が少なく事業を始められるなど様々な要因により、その活用に注目が集まっています。

一方で、旅館業法の許可が必要な旅館業に該当するにもかかわらず、無許可で実施されているものもあるなど、一定のルールが必要なことから、健全な民泊サービスの普及を図るため、平成29年6月に住宅宿泊事業法が成立しました。

住宅宿泊事業法の成立により、民泊を事業として行う場合、

①旅館業法の許可を得る
②住宅宿泊事業法の届出を行う

の選択肢ができました。
(国家戦略特区法という法律で、自治体が特区民泊の認定を得ると、その地域では国家戦略特区法に基づく民泊事業を営むこともできます。ただし、この認定を受けている自治体は、大阪府や東京都大田区など一部の自治体に限られています)

旅館業との関係

旅行客などへ宿舎を提供するという点で、旅館との違いが気になるかもしれません。
簡単に旅館業(簡易宿所)との相違を表にまとめました。

住宅民泊事業法旅館業法
(簡易宿所の場合)
許認可届出許可
申請先都道府県
(原則として民泊制度運営システムを利用して行う)
保健所
住宅専用地域での営業 ※可能
(条例で制限されている場合あり)
不可
営業日数の制限年間提供日数は180日以内
(条例でさらに制限されている場合あり)
制限なし
宿泊者名簿の作成・保存義務ありあり
最低床面積の確保最低3.3㎡/人33㎡
(宿泊者数10人未満の場合は、3.3㎡/人)
非常用照明等の
安全確保の措置義務
あり
家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要
あり
消防用設備等の設置あり
家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要
あり
近隣住民との
トラブル防止措置
必要
(宿泊者への説明義務、苦情対応の義務)
不要
不在時の管理業者への委託業務必要
(宿泊者への説明義務、苦情対応の義務)
不要
所管の役所国土交通省、厚生労働省、観光庁厚生労働省
※住居専用地域とは、都市計画法の用途地域で指定されている「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「第一種中高層住居専用地域」「第二種中高層住居専用地域」の4つで、主に住宅の良好な住環境を守るために指定された地域のことを指します。

大きな違いとして、住宅民泊事業法における民泊は届出で済むこと、その分、近隣住民とのトラブル防止措置を講じたり、不在時には管理業者を置かなければならないなどの点です。
また、営業日数の制限があるのも、住宅民泊事業法と旅館業法(簡易宿所)との大きな違いです。営業日数の制限がある点で、住宅民泊事業法と旅館業法のどちらの民泊を活用するかの判断が分かれるかもしれません。

なお、旅行業法に基づく場合にも、簡易宿所営業か旅館・ホテル営業のどちらかで許可を取得する必要があります。
旅館・ホテルや営業はフロントの設置義務がありますので、一般の住宅を活用して旅行者に宿泊してもらう業態としては、簡易宿所の許可を取得するのが一般的です。

参考:旅館業法が定める営業種別

旅館業法に定める旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされています。
この旅館業を経営する場合は、旅館業法に基づく営業許可を得なければならないこととなっています。

(旅館業の種別)

  1. 旅館・ホテル営業
    施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの
  2. 簡易宿所営業
    宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業(ペンション、ユースホステルなど)
  3. 下宿営業
    施設を設け、1月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業

なお、旅館業がアパート等の貸室業と違う点は、

①施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること
②施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないこと
とされています。

住宅を利用する場合であっても、有償で繰り返し、宿泊所として提供する「民泊サービス」を行うことは基本的に旅館業にあたるため、旅館業法に基づく許可を得ることが必要となります。
そして、住宅宿泊事業の届出をせずに民泊サービスを行う場合には、簡易宿所営業で許可を取得するのが一般的です。

旅館業法の実務的な所管は保健所です。許可の申請は保健所に行います。

営業について

民泊を始めるのであれば、お客さんに利用してもらうための営業活動が必要となります。

自分でホームページを作成して集客する方法であればお金がかからず良い手段ですが、作成や更新の手間がかかります。

手旅行代理店の中には、国内外に民泊の施設情報を一元的に紹介するサイトを運用している事例もありますので、掲載を検討してみても良いかもしれません。

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まとめ

地方へ移住後、民泊業を営みたい方に向け、民泊業を始めるに際して理解しておくべき制度についてご説明しました。
ご参考にしていただければ幸いです。

続いて、民泊業を開業するのに必要な行政上の手続きについて、以下の記事で解説していきます。

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