地方で【伝統野菜】を作ることのススメ。伝統野菜が地域を救う

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地方に移住して農業を始めたい方は多いと思います。初めて農業に携わる人は、まずは自治体やJAの研修を受けたりしてノウハウを得ていくのがオーソドックスなコースですが、その場合、通常は流通しやすい野菜(F1種)を作り、地域の直売所(道の駅)や、規模が大きくなってくれば市場(行政が運営する中央卸売市場や、行政の認可を受けて民間が運営する地方卸売市場)で販売することになります。

しかし、せっかく移住して農業を始めるのですから、その地域ならではの野菜、いわゆる「伝統野菜」も作ってみては如何でしょうか。普通の野菜と並行して作ることで、通常の収益も確保しつつ、農業による地域ブランド力向上にも貢献できるかもしれません。

今回は、伝統野菜について、解説します。

伝統野菜とは

伝統野菜とひと口にいっても、その定義が明確に定められているわけではありません。近年、特に2000年代に入り、全国の地方自治体が中心となり、地域に根差した野菜を「伝統野菜」と選定し、その保存や観光資源への活用が図られてきました。

特に有名な事例としては、京都の京野菜、金沢の加賀野菜などで、現在はスーパーなどでも特にコーナーが設けられるほどの認知度と人気を誇っています。

伝統野菜における「伝統」とは、どれくらい古い年代を指すのでしょうか。これについては、その野菜を伝統野菜であると認定している組織(主に自治体などの行政)によって考え方が異なっており、例えば京都府が認定している京野菜では、「明治以前に導入されたもの」とされています。

参考:京都府_今日の伝統野菜・今日のブランド産品

ただ、京野菜の線引きは厳しめであり、終戦前後からを伝統野菜の基準としている事例も多いです。有名な加賀野菜の定義も終戦である昭和20年で線引きしているようです。

参考:金沢市_加賀野菜

伝統野菜の認証制度ができるまで

伝統野菜は昔からその地域で作られてきた在来種の野菜ということが言えますが、現在流通している多くの野菜は、優れた特性をもつ野菜品種を掛け合わせて品種改良した種=F1種が大半を占めています。
F1種は、野菜の大きさ、成長速度、耐性、味などが概ね均一となるため、扱う卸売・仲卸・小売や、購入する消費者にとって在来種に比べ選択しやすいものでした。

このため、市場ではF1種の野菜が席巻し、在来種は細々と農家で自家消費される時代がありました。
このことにより、多くの在来種を失わせる危機にあり(現実に失われた在来種も多いようです)ましたが、地産地消の観点からF1種ではなく在来種を好む消費者が増えたことや、在来種を大切にし販売していきたいという農家も増え、地方自治体による認証制度の整備もあり、「伝統野菜」というカテゴリーで在来種が復権しつつあります。

全国の伝統野菜

全国各地の自治体で行われている認定制度により、多くの在来種が伝統野菜の認定を受けています。

伝統野菜を後世に残していくために農業体験・食育・PR活動を行っている「一般社団法人 日本伝統野菜推進協会」では、都道府県別に伝統野菜の一覧をまとめています。

参照:一般社団法人_日本伝統野菜推進協会

これによれば、全国各地に伝統野菜と呼ばれる種があることが分かります。

力を入れている自治体では、認定している伝統野菜をPRするため、独自のホームページを立ち上げているところもあります。

参考:長野県_信州の伝統野菜

伝統野菜を作るには

伝統野菜はF1種と異なり、その作り方をメーカーなどが一律に把握しているものではないため、栽培にノウハウが必要となります。また、そもそも作るにしても、タネや苗を入手することでさえ大変です。

まずは伝統野菜を作っている農家さんを探しましょう。伝統野菜を認定している自治体の農林課などの担当に聞いてみるのが近道です。

次に、農家さんのもとに通い、伝統野菜の作り方を教えてもらいましょう。伝統野菜を用いた地域活性化など、伝統野菜を作ることによる地域へのメリットは大きいですので、そのことを丁寧に伝えてみてはどうでしょうか。

また、しっかり経営に結び付けていくためには、地元の直売所(道の駅)や飲食店との連携も不可欠です。直売所は、会員制の組合が運営している場合が主ですので、そこに加わり、自分で栽培した伝統野菜を販売すると良いでしょう。
飲食店については、伝統野菜を扱っているところを自治体の担当などに聞き、自分の栽培した伝統野菜を扱ってくれないか交渉しましょう。

栽培規模が大きくなってきたら、インターネットを使い、消費者に直接販売する販路を作ることも検討してみてはどうでしょうか。そこから人気が出て、経営が安定するかもしれません。

なお、伝統野菜の種を扱っているメーカーさんもいます。例えば「日本全国の家庭菜園で、旬の美味しい伝統野菜を、安全に育てるお手伝いができるように」を志す「野口のタネオンラインショップ」さんで購入することもできます。

参考:野口のタネオンラインショップ

お目当ての伝統野菜があれば、オンラインショップで購入して栽培を始めてみるのも良いのではないでしょうか。

まとめ

農業を営む中で、伝統野菜を作ることについて、解説しました。

伝統野菜は、地域のブランド力を高める効果もあり、移住して地域活性化に取り組みたい人にとってその栽培は良い選択肢となると思います。

伝統野菜を次の世代に伝えていくため、まずは少しでも作ってみては如何でしょうか。ゆくゆくは大きなブランドとなり、地産地消をはじめ、地域に多大な貢献をしてくれるかもしれません。

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