総務省の調査によれば、2018年時点で全国の空き家は約849万戸もあり、20年間で約1.5倍もの増加を示しています。国は空き家対策として、長期間空き家となっている(使用がなされていないことが常態化している)建物を自治体が「特定空き家」にとし、行政手続きにより除却・修繕することができる仕組みを作りました。
今後、空き家の解消が行政課題となりそうです。そうした中、その空き家を使った事業展開は、地域の活力を生み出す契機となります。
今回は、空き家活用の方法などについて、解説していきます。なお、以下の解説で使用する図は、国土交通省の「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」(令和4年10月)の資料から引用しています。
空き家の現状
総務省の住宅・土地統計調査によれば、空き家の総数は、この20年で576万戸から849万戸まで増加(約1.5倍増加)しています。
このうち、長期にわたって不在の住宅などは349万戸となり、20年前の182万戸から約1.9倍となっています。
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001518774.pdf
上記図で「その他空き家」となっている建物の対象は、長期にわたって不在の住宅などです。
2018年時点の全国の空き家率は平均5.6%です。
東京の空き家率は2.4%と低く、高知県は12.7%もあるなど、地域によって差が大きいことも分かります。
また、「その他空き家」のうち、一戸建てのものが7割以上を占めているようです。
空き家活用の事例
8割以上の市町村において、空き家等の利活用に関して何等かの取り組みを行っています。
具体的には、「移住・定住」や「地方創生」に関する活用のほか「二拠点居住」などへの活用の促進、行政目的である「中心市街地活性化」「農山漁村の振興」「観光の振興」に関する活用を進めているようです。
国の空き家政策について
空き家は、以下のように、地域の防災性や防犯性を低下させるなど、具体的な危険性を伴うものです。
国は空き家を解消するため、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を平成27年から施行しています。
この法律では、空き家のうち以下、
①倒壊等著しく保安上危険とうなるおそれのある状態
②著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
を「特定空家等」と定義付け、この特定空家等に対して、
・除却、修繕、立木竹の伐採等の措置の助言又は指導、勧告、命令が可能
・さらに要件が明確化された行政代執行の方法により強制執行が可能
とすることで、自治体が空き家を解消する手段を作りました。
また、特定空家等として自治体が法律に基づく「勧告」という行為を行うと、固定資産税等の以下の特例措置が解除され、収める税金の額も上がることになります。
小規模住宅用地 (200㎡以下の部分) | 一般住宅用地 (200㎡を超える部分) | |
固定資産税の課税標準 | 1/6に減額 | 1/3に減額 |
空き家を解消する仕組みとして、かなり強い措置といえます。
地域住民として空き家を活用する方法
空き家の活用方法はいろいろとありますが、継続して運営していけることが重要です。活用方法の例は以下のとおりです。
1 地域住民の交流の場(コミュニティ)として活用する
地域の人が集いやすい施設を作る例です。継続して運営していくため、単なる地域コミュニティの場としてだけでなく、例えば、地域特有の地場産品を販売する施設を作り、そこに地域住民の方も招き、地域全体で運営していける仕組みを作ることが大切になってきます。
この取組は徐々に一般的になりつつあり、民間でNPO法人を設立し運営する事業者が増えています。
2 社会福祉施設として活用する
社会福祉施設として、例えば老人福祉施設や障碍者福祉施設として活用するなどは、以前から行われていますが、空き家が増加している中、安価に使用できる施設として改めて着目して良いかと思います。
少子高齢化に伴い、高齢者や障害者が増えていますので、新規事業者として施設を活用すれば、地域の空き家減少と福祉サービス環境の提供といった相乗効果が期待でき、地域に喜ばれる結果となるかもしれません。
3 民泊として活用する
地域外から観光客を招く場合、ホテルや旅館より安価で運営できる民泊の場として活用する方法もあります。元々の空き家の所有者の許可は必要ですが、所有者としても、単なる空き家ではなく賃貸物件として扱えるため、特定空家等の対象から外すこともでき、かつ賃料も得られるため、メリットが大きいと思います。
民泊を始める場合の方法については、以下の記事で解説しています。
まとめ
如何でしょうか。空き家解消は自治体の喫緊の課題であり、自治体としては、「移住・定住」への活用などに活路を求めています。
地方に移住した際、その空き家を活用しながら事業を行えば、行政からの支援を受けるなど資金面でのメリットがあり、かつ地域課題の解決にも貢献することもできます。
可能であれば、事業を始める際、空き家活用について検討してみてください。自治体への相談のほか、地方創生に知見を有する人、行政手続きに堪能な行政書士を活用し、地域課題に取り組んでみては如何でしょうか。