不動産業で働いた経験がある場合、地方移住して不動産に関する仕事を始めたいと思うかもしれません。
不動産業には、不動産の売買、仲介(「媒介」ともいわれます)、賃貸、管理など、様々な業務が含まれます。
このうち、売買や仲介といった業務を営む場合には、宅建業法の規定により、【宅建業】の許認可を受ける必要があります。
今回は、宅建業を営む際に必要な許認可などについて、解説します。
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宅地建物取引業について
宅地建物取引業(以降は「宅建業」とします)とは、宅地または建物について以下に掲げる行為を業として行うものをいいます。
① 宅地又は建物について自ら売買又は交換すること。
② 宅地又は建物について他人が売買、交換又は貸借するにつき、その代理若しくは媒介すること。
免許を要する宅建業とは、不特定多数の人を相手方として、宅地又は建物に関して売買等を反復又は継続して行い、社会通念上事業の遂行とみることができる程度のものをいいます。
表にまとめると以下のとおりです。以下をご覧いただくと分かりますが、自らの物件を賃貸借する場合は宅建業に該当せず、宅建業者に必要な免許は不要ですので、ご注意ください。
契約の形態 | 自己の物件 | 他人の物件の代理 | 他人の物件の媒介(仲介) |
---|---|---|---|
売買 | 〇 | 〇 | 〇 |
交換 | 〇 | 〇 | 〇 |
賃借 | × | 〇 | 〇 |
免許の区分について
宅建業を営もうとする人は、宅建業法の規定により、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けることが必要です。
①国土交通大臣の免許は、2つ以上の都道府県の区域内に事務所を設置してその事業を営もうとする場合
②都道府県知事免許は、1つの都道府県の区域内に事務所を設置してその事業を営もうとする場合
です。
宅建業の免許は、個人又は法人が受けることができます。
個人の免許は、個人が宅建業を営むためのものであり、法人の免許は、株式会社、協同組合及び公益法人等の会社法その他の法律によって法人格を有するものが宅建業を営むためのものです。
以上を整理すると、次のようになります。
免許権者 | 2つ以上の都道府県に事務所を設置 法人/個人 | 1つの都道府県に事務所を設置 法人/個人 |
---|---|---|
国土交通大臣 | 〇 | ー |
都道府県知事 | ー | 〇 |
免許の有効期限について
宅建業の免許は、消費者(借主など)保護の観点から定められた制度であり、厳密な審査を経て一定の資格を有すると認められる者にだけ付与されます。
この免許には有効な期間が定められており、具体的には「免許の有効期間は、5年とする。」(業法第3条第2項)こととされています。
有効期間の満了した後も引き続き宅建業を営もうとする場合は、その有効期間が満了する日の90日前から30日前までの間に、免許の更新手続をすることが必要です。
当然ですが、この手続を怠った場合は免許が失効となります。更新の手続をしないで宅建業を営むと、無免許事業等の禁止の規定により、罰則が科されてしまいます。
免許を受けるための要件①事務所
宅建業法の第3条第1項において、事務所とは「本店、支店その他の政令で定めるものをいう。」と規定されており、その明確化を図っています。
それを受け、政令では、次の二つを業法上の「事務所」として定めています。
- 本店または支店
①宅建業者が商人の場合
本店または支店として履歴事項全部証明書に登記されたもの
②宅建業者が商人以外の者である場合
協同組合(農業協同組合及び生活協同組合)や公益法人などの商人でない業者については、個々の法律で、「主たる事務所」又は「従たる事務所」として取り扱われるもの
- 本店または支店のほか、「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所」で、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの
「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所」とは、物理的にも社会通念上、事務所と認識される程度の形態を備えていることが必要と考えられています。
このため、テント張りの案内所など、移動の容易な施設等は事務所としては認められません。
また、事務所内には、対面可能な応接セット(執務場所と明確に区別されていること)、従事する人数分の机・椅子を含む執務場所、固定電話(開通済)の設置が必要とされています。
このように、一般的には、物理的にも宅建業の業務を継続的に行える機能を持ち、社会通念上も事務所として認識される程度の独立した形態を備えていることが必要です。また、事務所として使用する権原を有していることが必要です。
このため、一般の戸建て住宅、又は、マンション等の集合住宅の一室(一部)を事務所として使用すること、一つの事務所を他の法人等と使用すること、仮設の建築物を事務所とすること等は原則として認めていません。
免許を受けるための要件②専任の宅地建物取引士
宅建業法は、その事務所等に一定数以上の成年者である専任の宅地建物取引士を設置することを義務付けています。
この「一定数」は、国土交通省令で定められており、一つの事務所において「業務に従事する者」5名あたり1名以上の割合とし、法で定める案内所等については、少なくとも1名以上の専任の宅地建物取引士の設置を義務付けています。
宅地建物取引士は
①当該事務所に常勤して、
②専ら宅建業の業務に従事する
という、「常勤性」と「専従性」の二つの要件を充たすことが必要です。
なお、専任の宅地建物取引士の数が不足した場合は、2週間以内に補充等必要な措置をとらなければなりません。
- 宅地建物取引士とは
宅地建物取引士は、宅地建物取引士の資格試験に合格後、取引士資格登録をし、取引士証の交付を受けている方をいいます。
欠格事由について
免許を受けようとする方が以下のような「欠格事由」に該当する場合は、免許を受けることができません。
欠格事由 | 期間など |
---|---|
免許不正取得、情状が特に重い不正不当行為又は業務停止処分違反をして免許を取り消された場合 | 5年間免許を受けられない |
免許不正取得、情状が特に重い不正不当行為又は業務停止処分違反をした疑いがあるとして免許取消処分の聴聞の公示をされた後、廃業等の届出を行った場合 | 〃 |
禁錮以上の刑又は宅地建物取引業法違反等により罰金の刑に処せられた場合 | 〃 |
暴力団の構成員等である場合 | 〃 |
免許の申請前5年以内に宅地建物取引業に関して不正又は著しく不当な行為をした場合 | 〃 |
破産手続の開始の決定を受けて復権を得ない場合 | 状況が回復しないと免許を受けられない |
宅地建物取引業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな場合 | 〃 |
心身の故障により宅地建物取引業を適正に営むことができない場合 | 〃 |
事務所に専任の取引士を設置していない場合 | 〃 |
参考:国土交通省関東地方整備局
まとめ
不動産業のうち、宅建業のかかる業務を行うには必ず免許が必要です。
手続きを怠ることなく適正に免許を取得するため、行政書士などの専門家の力を借り、スムーズに手続きを終え、業務を開始してください。
手続きについて、以下の記事で解説しています。