【障害福祉サービス】を起業する~移住先で障害福祉サービスを提供する方法①概要~

仕事

地方では空き家が急増しており、その活用が課題となっています。
また、少子高齢化が進む中、障害者福祉サービスのニーズも増大しています。

国は、障害者総合支援法(正式には「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)により、身体障害、知的障害、発達障害、精神疾患、難病などによって日常生活に制限が生じ、介護や就労支援を必要とする方々に対し、総合的な支援を実施しています。

地方に移住して働く場合、障害福祉サービスに関わる仕事を起業することもあるかと思います。ここでは、障害福祉サービスについて解説します。

障害福祉サービスとは

障害福祉サービスとは、障害や特定の難病がある方が生活を続けられるように支援するサービスのことです。
具体的には、
 ・身体障害者 および 障害児
 ・知的障害者
 ・精神障害者
 ・難病患者
です。

障害福祉サービスは、障害者総合支援法を根拠法としています。障害児は児童福祉法が根拠です。

障害福祉サービス事業等を提供する事業者は、障害者総合支援法第36条第1項、第38条第1項及び第51条の19第1項の規定に基づき、都道府県の指定を受ける必要があります。
指定を受けることにより、支給決定を受けた障害者へサービスを提供した場合に、報酬告示に基づいた自立支援給付の支給を受けることができます。

障害福祉サービスの詳細

個々の障害のある人々の障害程度や勘案すべき事項(社会活動や介護者、居住等の状況)を踏まえ、個別に支給決定が行われる「障害福祉サービス」と、市町村の創意工夫により、利用者の方々の状況に応じて柔軟に実施できる「地域生活支援事業」に大別されます。

「障害福祉サービス」は、介護の支援を受ける場合には「介護給付」、訓練等の支援を受ける場合は「訓練等給付」に位置付けられています。

出典:厚生労働省 サービスの体系

  • 居宅介護

居宅において、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言、その他の生活全般にわたる援助を行います。

  • 重度訪問介護

重度の肢体不自由者等で常に介護を必要とする方に、居宅において、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助並びに外出時における移動中の介護を総合的に行います。

  • 同行援護

外出時において、視覚障害等により移動に困難を有する方に同行し、移動に必要な情報を提供(代筆・代読を含む)するとともに、移動の援護、排せつ及び食事等の介護その他の外出する際に必要な援助を行います。

  • 行動援護

障害者(児)が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護、外出時における移動中の介護、排せつ及び食事等の介護、その他行動する際に必要な援助を行います。

  • 療養介護

医療と常時介護を必要とする人に、医療機関への入院とあわせて、機能訓練や介護、日常生活の世話などを行います。主として昼間において、病院において行われる機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び日常生活上の世話を行う。また、療養介護のうち医療に係るものを療養介護医療として提供します。

  • 生活介護

常時介護を必要とする方に、障害者支援施設その他の施設において、主として昼間において、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の必要な日常生活上の支援、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他の身体機能又は生活能力の向上のために必要な援助を行います。

  • 短期入所(ショートステイ)

居宅においてその介護を行う者の疾病その他の理由により、障害者支援施設、児童福祉施設その他の施設等への短期間の入所を必要とする障害者(児)につき、当該施設等に短期間の入所をさせ、入浴、排せつ及び食事その他の必要な保護を行います。

  • 重度障害者等包括支援

重度の障害者(児)に対し、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援及び共同生活援助を包括的に提供します。

  • 施設入所支援(障害者支援施設での夜間ケア等)

施設に入所する障害者につき、主として夜間において、入浴、排せつ及び食事等の介護、生活等に関する相談及び助言、その他の必要な日常生活上の支援を行います。

  • 自立訓練(機能訓練)

身体障害者等につき、障害者支援施設若しくは障害福祉サービス事業所に通わせ、当該障害者支援施設若しくは障害福祉サービス事業所において、又は当該障害者の居宅を訪問することによって、理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーション、生活等に関する相談及び助言その他の必要な支援を行います。

  • 自立訓練(生活訓練)

知的障害又は精神障害を有する障害者につき、障害者支援施設若しくは障害福祉サービス事業所に通わせ、当該障害者支援施設若しくは障害福祉サービス事業所において、又は当該障害者の居宅を訪問することによって、入浴、排せつ及び食事等に関する自立した日常生活を営むために必要な訓練、生活等に関する相談及び助言、その他の必要な支援を行います。

  • 就労移行支援

就労を希望する65歳未満の障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者に対し、生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談、その他の必要な支援を行います。

  • 就労継続支援A型(雇用型)

企業等に就労することが困難な者であって、雇用契約に基づき、継続的に就労することが可能な65歳未満の者に対し、生産活動その他の活動の機会の提供、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、その他の必要な支援を行います。

  • 就労継続支援B型(非雇用型)

通常の事業所に雇用されることが困難な障害者のうち、通常の事業所に雇用されていた障害者であって、その年齢、心身の状態その他の事情により、引き続き当該事業所に雇用されることが困難となった者、就労移行支援によっても通常の事業所に雇用されるに至らなかった者、その他の通常の事業所に雇用されることが困難な者につき、生産活動その他の活動の機会の提供、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、その他の必要な支援を行います。

  • 就労定着支援

就労移行支援事業所等の利用を経て、一般企業等へ移行した障害者に対し、就労の継続を図るため、企業・自宅等への訪問や来所による連絡調整・指導・助言等、就労に伴い生じている生活面の課題に対応するために必要な支援を行います。

  • 自立生活援助

障害者支援施設やグループホーム、精神科病院等から地域での一人暮らしに移行した障害者等で、理解力や生活力等に不安がある方に対して、一定の期間(原則1年間)にわたり、定期的な居宅訪問や随時の通報を受けて行う訪問、利用者からの相談対応等により、日常生活における課題を把握し、必要な情報の提供及び助言、関係機関との連絡調整等を行います。

  • 共同生活援助(グループホーム)

共同生活を営むべき、あるいは営むのに支障がない障害者につき、主として夜間において、共同生活住居において入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事、生活等に関する相談及び助言、就労先その他関係機関との連絡、その他の必要な日常生活上の世話を行います。さらに、入居者間の交流を保ちながら一人で暮らしたいというニーズに応えるためにサテライト型住居があります。

  • 一般相談支援(地域移行支援・地域定着支援)

地域移行支援は、障害者支援施設等に入所している者、精神科病院に入院している精神障害者、保護施設・矯正施設等に入所している障害者につき、住居の確保その他の地域における生活に移行するための活動に関する相談その他の必要な支援を行います。 地域定着支援は、居宅において単身等で生活する障害者につき、常時の連絡体制を確保し、障害の特性に起因して生じた緊急の事態等に相談その他必要な支援を行います。

  • 特定相談支援
    ※所在地の区市町村に申請

サービス等利用計画についての相談及び作成などの支援が必要と認められる場合に、障害者(児)の自立した生活を支え、障害者(児)の抱える課題の解決や適切なサービス利用に向けて、ケアマネジメントによりきめ細かく支援するものです。

出典:障害福祉サービス等の利用状況

参考:障害者総合支援法について

障害者福祉サービスについては、利用者の立場に立った制度を構築するため、平成12年の法律改正により、これまでの「措置制度」から、新たな利用の仕組み(「支援費制度」)に平成15年度より移行することとされています。
支援費制度では、障害者自らがサービスを選択し、事業者との対等な関係に基づき、契約によりサービスを利用することとなった、とされています。

しかし、支援費制度においても、障害種別ごとのサービス提供で使いづらい・自治体によりサービス提供体制が不十分・精神障害者は支援費制度対象外となるなど、課題もあったようです。

このため、障害種別に関わらずサービス提供を一元化・支給決定手続きの明確化・就労支援の強化・国の費用負担責任の強化、利用者原則一割負担を目的とし、2006年に障害者自立支援法が施行されました。

そして、障害福祉サービスの充実等障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するため、「障害者総合支援法」が2013年に施行され、総合的な障害福祉サービスの仕組みがスタートしました。

その後も、2017年、2021年、2022年と度重なって改正がなされています。直近の2022年改正のポイントは以下のとおりです。

 ①障害者等の地域生活の支援体制の充実
 ②障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進
 ③精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備
 ④難病患者及び小児慢性特定疾病児童等に対する適切な医療の充実及び療養生活支援の強化
 ⑤障害福祉サービス等、指定難病及び小児慢性特定疾病についてのデータベースに関する規定の整備

 出典:厚生労働省【障害福祉サービスについて】

障害福祉サービスは、サービスを利用する方のニーズに応じ、随時見直しがされています。法改正は今後も2~3年程度ごとに随時行われていくものと思われます。
改正には、厚生労働省の社会保障審議会で審議された上で、行われます。

 厚生労働省 社会保障審議会(障害者部会)

障害福祉サービスを始めるために必要なこと

障害福祉サービスを開始するまでの流れについて、大まかには以下のとおりです。

新規事業所開設について、都道府県や区市町村などが定期的に説明会を開催していることがあります。
この説明会への出席を、その後の手続きの必須要件としている場合があります(例えば東京都では、年1回の説明会へ出席しないと、その後必須とされている来庁相談を受けられない、とされています)

このほか、実際の申請の前に、多くの都道府県等では事前相談することが定められています。その際、事業計画の作成を求められることがあり、また、都道府県等への相談後、市町村への相談も求められることがあります。

  1. 法人格の取得
  2. 設置基準を満たす人員の確保
  3. 要件に適合した施設を用意
  4. 申請書類の準備
  5. 都道府県等へ申請

それぞれ自治体ごとに要件が若干異なっています。申請先の自治体が定める要件を必ず先に確認し、それに合致した事業所を用意します。

特に、施設については、事後的に修正対応することが困難な場合も多いですので、自治体の要件を確認する、心配であれば自治体に問い合わせるなど、慎重に検討した方が良いでしょう。

なお、申請に対する自治体の許認可(事業所としての指定)は2~3か月以内と定められています(これを「標準処理期間」といいます)。自治体から事業所として指定されないと事業開始できませんので、十分にご注意ください。
 気を付けることとして、開業までの資金の確保は見落としがちですので、留意してください。

まとめ

障害福祉サービスを事業として開始する場合に必要な手続きについて、説明しました。 

地方でも障害福祉サービスのニーズは確実に高まっています。少子高齢化が急速かつ深刻に進む地方にとって、とても重要で必要な仕事です。地方移住後、自分で起業する際の選択肢として検討してみてください。

提供できるサービスは様々ですが、ご関心があれば自治体のホームページなどで情報収集し、必要に応じて自治体に問い合わせしてみると良いと思います。この分野に詳しい専門家に相談してみても良いかと思います。

なお、別の記事では、障害福祉サービスを始めるための事務手続きについて説明しています。参照してみてください。

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