【建設業】の許可を受ける④ ~建設キャリアアップシステムについて~

仕事

建設業を営む場合、国は、建設現場で働く人(技能者)の情報を蓄積する「建設キャリアアップシステム」の導入を推進しています。

令和5年度から、原則として建設キャリアアップシステムの導入を国交省は推進しており、近い将来、完全義務化になるものと思います。このため、建設業を営む際に対応が必須となるでしょう。

参考:国土交通省

今回は、建設キャリアアップシステムについて、解説していきます。なお、このシステムは、建設業許可の際とは異なり、地方自治体の登録ではなく、国土交通省が一元的に管理する仕組みです。

参考:建設キャリアアップシステム

建設キャリアアップシステムとは

「建設キャリアアップシステム」は、技能者が、技能・経験に応じて適切に処遇される建設業を目指して、技能者の資格や現場での就業履歴等を登録・蓄積し、能力評価につなげる仕組みです。(CCUS)と略されています。

国土交通省によれば、「若い世代の技能者の方がキャリアパスや処遇の見通しをもてる、技能・経験に応じて給与を引上げる、技能者を雇用し育成する企業が伸びていける建設業を目指し、国交省と建設業団体で連携して普及・利用促進に取り組んでいます」とされています。

「建設キャリアアップシステム(CCUS)」は、技能者が、技能・経験に応じて適切に処遇される建設業を目指して、技能者の資格や現場での就業履歴等を登録・蓄積し、能力評価につなげる仕組みです。

国土交通省ポータルサイト

より具体的には、技能者の資格や現場での就業履歴等を登録・蓄積し、技能・経験が客観的に評価され、技能者の適切な処遇につなげる仕組みで

  1. 若い世代がキャリアパスの見通しをもてる
  2. 技能・経験に応じて処遇を改善する
  3. 技能者を雇用し育成する企業が伸びていける建設業を目指す

とされています。

システムの具体的な運用の流れは以下の通りです。簡単にいえば、

  • 技能者情報等の登録
  • カードの交付・現場での読取

が必要で、これにより就業履歴を蓄積し、技能レベルを上げていき、待遇改善につなげるイメージです。

引用:国土交通省

また、この取組より、技能者のみならず、建設業が「地域の守り手」として将来にわたり持続的な役割を担っていくために必要なものとされています。

※「技術者」ではなく、現場で実務を行う「技能者」を対象としています。

建設キャリアアップシステム導入の背景

そもそもなぜ、このような仕組みが導入されたのでしょうか。それは、建設業を取り巻く厳しい現状にあります。

  • 高齢職人の退職と若手職人の不足

建設現場の若手職人の不足です。65歳以上の大量退職が見込まれる中、若者が不足している現状に対し、若者に選ばれる職場を作る必要があります。

  • 技能者の給与水準が低い

現場で作業を行う技能者については、建設業全体の給与上昇に比べ、低い状況です。特に技能者の給与を底上げする必要があります。

  • 獲得してきたスキルが給与に反映されていない

製造業に比べ、建設業の賃金ピークは早く、ピーク時の金額も製造業より低い状況で、それまでのキャリアで獲得したスキル(管理・指導等)が評価されていない恐れがあり、スキル把握が必要です。

このほかにも、社会保険への加入促進、他の産業と比較して長時間労働となりやすい建設業の労働時間の短縮、週休2日取得できない労働環境の改善など、技能者の労働状況の把握を目的としています。

具体的な仕組み

建設キャリアアップシステムは、技能者が本人であることを確認したうえでシステムに登録し、IDが付与されたCCUSカードを交付することがスタートになります。

システムを活用し、いつ、どの現場に、どの職種で、どの立場(職長など)で働いたのかを就業履歴として電子的に記録・蓄積します。
並行して資格の取得や講習の受講履歴など、技能・研鑽の記録を登録します。

具体的なシステム利用の流れ

  • STEP1 登録申請

建設キャリアアップシステムを導入するには、建設業を営む法人・個人のほか、技能者本人もシステム登録が必要です。

区分登録が必要な情報
技能者【必ず登録する必要がある情報=簡略型登録】
・本人情報
・所属事業者ID、所属事業者名、職種
・社会保険、建退協加入状況
など
【登録を推奨する情報=詳細型登録】
・保有している資格、研修受講履歴、表彰
・健康診断受診歴
など
事業者・商号、所在地、資本金等
・建設業許可情報、業種等
・社会保険加入状況
など
  • STEP2 現場の登録、施工体制の登録

工事開始後、元請事業者が工事の概要や契約情報をシステムに登録します。

加えて、下請事業者と元請事業者が、現場・契約情報に対してそれぞれの施工体制を登録します。

  • STEP3 就業履歴の蓄積

元請事業者が工事現場に、専用のカードリーダーや顔認証のデバイス等を設置します。

技能者は日々、工事現場でカードリーダー等を用い、情報を蓄積していきます。

  • 建設キャリアアップシステムの活用

技能者の情報を蓄積することで、技能者本人が自分の資格や就業履歴を証明することが可能となり、働く現場にかかわらず、適正な評価と処遇を受けられます。

また、事業者にとっても、技能者の就業状況等を容易に確認できるほか、入退場にICカードを使うことにより、現場の入場管理等の効率化を図ることができる、とされています。

システムの利用料金

システムは無料ではなく、一定の料金がかかります。具体的には、以下のとおりです。

  • 技能者登録料

建設キャリアアップカードの発行に必要となる料金です。
カード有効期間は発行日から発行9年経過後の最初の誕生日までとなっています。なお、申請時に60歳以上の人の有効期限は、発行14年目の誕生日まで、本人確認書類未提出者は発行2年目の誕生日までです。

インターネット(1)簡略型登録:2,500円
(2)詳細型登録:4,900円
認定登録機関詳細型:4,900円
※「認定登録機関」とは、申請書類の受け取りや記入補助を行い、本人情報や資格などの真正性を確認し、登録のできる窓口機関です。基本的には予約制となっています。
  • 事業者登録料

事業者がシステムを利用する際に必要な登録料です。登録の有効期限は5年間で、登録が完了した日から5年後の登録月末まで有効となります。
登録料は事業者の資本金額をもとに決まります。

一人親方0円
500万円未満(個人事業主含む)6,000円
500万円以上1,000万円未満12,000円
1,000万円以上2,000万円未満24,000円
2,000万円以上5,000万円未満48,000円
5,000万円以上1億円未満60,000円
1億円以上3億円未満120,000円
3億円以上10億円未満240,000円
10億円以上50億円未満480,000円
50億円以上100億円未満600,000円
100億円以上500億円未満1,200,000円
500億円以上2,400,000円
  • 管理者ID利用料

事業者が建設キャリアアップシステムにおいて事業者情報(現場情報を含む)を管理するために 必要となる管理者ID に対する利用料金です。
毎年支払う必要があり、取得・更新日から1 年後の取得日の属する月末までが期限です。

金額は、1つのIDにつき、税込み11,400円です。

なお、一人親方の管理者ID利用料は、2,400円です。
また、現場管理者として登録されたIDについては管理者ID利用料は不要です。

  • 現場利用料

システムにおいて現場・契約情報を登録した事業者(元請事業者)に対し、当該現場における技能者就業履歴情報の登録回数(現場に入場する技能者の人日単位)に対する利用料金であり、一定期間ごとの事後精算でお支払いいただく必要があります。

金額は、1人1日につき、1現場あたり税込み10円です。

例えば、20 人の技能者が50 日就業した場合 20人×50日×10円=10,000円となります。

まとめ

建設キャリアアップシステムの導入は必須となっていくものと思われます。建設業を営む事業者としては、建設業許可を取得後、速やかにシステムを導入し、現場の技能者に安心して働いてもらえる環境を整備することで、意欲ある労働者の確保に努めたいですね。

システムの導入に際しては、代行が可能です。行政書士などの専門家のサポートを受け、建設業の運営そのものに注力しても良いかと思います。

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