不動産業には、不動産の売買、仲介(「媒介」ともいわれます)、賃貸、管理など、様々な業務が含まれます。
このうち、売買や仲介といった業務を営む場合には、宅建業法の規定により、【宅建業】の許認可を受ける必要があります。
前回「地方で【宅地建物取引業】を起業する①」に引き続き、宅建業を営む際に必要な申請手続きなどについて、解説します。
新規の免許申請の手順について
新しく宅地建物取引業を申請する場合の主な手順を説明します。なお、以下で説明する事例は、事務所が1都道府県のみの場合(都道府県知事への申請の場合)です。
- 書類作成
「地方で【宅地建物取引業】を起業する①」で申請要件を満たしている場合、決められた様式に記載して書類を作成します。紙でも作成できますが、インターネットでダウンロードできる仕組みもありますので、申請先の都道府県のホームページを確認しましょう。
- 申請
都道府県の窓口に提出します。この際、手数料が必要です。2024年3月末時点で33,000円です。窓口に現金で支払うケースが多いようです。
- 審査
担当部署の審査を受けます。概ね1~2か月かかるようです。注意すべきこととして、審査中に、申請内容に変更が生じた場合、申請内容を取り下げ、要件を満たした段階で改めて申請しなければなりません。なお、書類の記載上の修正のみであれば、審査中に対応してもらえる場合もあります。
- 免許
審査の上、問題がなければ許可されます。免許が申請した事務所本店に送付されます。
- 「営業保証金の供託」または「保証協会への保証金分担金の納付」
消費者保護の観点から、一定の金額をあらかじめ供託等する必要があります。詳しくは以下でご説明します。
- 免許証の交付
ようやく免許証を取得することができます。これにより、晴れて営業を開始することができます。
免許申請に必要な書類について
番号 | 書類の名称 | 法人 | 個人 |
---|---|---|---|
1 | 免許申請書 | 〇 | 〇 |
2 | 相談役及び顧問、5%以上の株主・出資者等の名簿 | 〇 | × |
3 | 身分証明書の原本 ※1 | 〇 | 〇 |
4 | 登記されていないことの証明書の原本 ※1 | 〇 | 〇 |
5 | 代表者の住民票の原本(マイナンバーの記載がないもの) | × | 〇 |
6 | 略歴書 ※1 | 〇 | 〇 |
7 | 専任の宅地建物取引士設置証明書 | 〇 | 〇 |
8 | 宅地建物取引業に従事する者の名簿 | 〇 | 〇 |
9 | 専任の取引士の顔写真貼付用紙 | 〇 | 〇 |
10 | 法人の履歴事項全部証明書の原本 | 〇 | × |
11 | 宅地建物取引業経歴書 | 〇 | 〇 |
12 | 決算書の写し(表紙、貸借対照表及び損益計算書)※2 | 〇 | × |
13 | 資産に関する調書 | × | 〇 |
14 | 納税証明書の原本 ※3 | 〇 | 〇 |
15 | 誓約書 | 〇 | 〇 |
16 | 事務所を使用する権原に関する書面 | 〇 | 〇 |
17 | 事務所付近の地図(案内図) | 〇 | 〇 |
18 | 事務所の写真(間取図・平面図等を添付) | 〇 | 〇 |
※1 代表取締役、取締役、監査役、代表執行役、執行役、専任の宅地建物取引士、政令使用人、会計参与、相談役、顧問の全員について必要
※2 新設法人は「開始貸借対照表」を作成・添付する。
※3 新設法人は添付不要
営業保証金の供託について
宅建業法では、宅地建物の取引によって生じた債務について、弁済を一定範囲で担保するための措置として、あらかじめ国の機関である「供託所」(法務局)に法定の「営業保証金」を供託することが定められています。
このことにより、宅建業者と取引をした人は、取引により生じた損害に相当する金銭の還付を受けることができることとしています。
宅建業の営業を開始するためには、新規免許を受けた(免許通知のはがきが届いた)後、「営業保証金」を供託し、供託書(その供託物受入れの記載のある書類)の写しを添付して、申請先の都道府県に届出をしなければなりません(申請の際、供託書の原本も提示することになります)
なお、この手続きは、免許日から3か月以内に完了しなければなりません。期日を過ぎてしまうと免許が取り消される場合もありますので、供託金の準備はしっかり目途を付けておく必要があります。
(免許失効後、新たに免許を取得した場合、その新たな免許についての営業保証金も供託しなければなりません。)
- 供託金の額
以下を納付します。
区分 | 供託額 |
---|---|
主たる事務所(本店) | 1,000万円 |
従たる事務所(支店等) | 500万円 |
※従たる事務所は、1店舗あたりです。複数の店舗を出店する場合、その数の分、供託金が必要です。
保証協会への加入と保証金分担金の納付について
宅地建物取引業保証協会(保証協会)は、国土交通大臣から指定を受けた公益社団法人で、宅建業に関して、苦情の解決、従事者に対する研修、取引により生じた債権の弁済等の業務を行っています。
宅地建物の取引によって債権が生じた人は、この保証協会の認証を得て、営業保証金相当額の範囲内で弁済を受けられるようになっています。
保証協会に加入して分担金(弁済業務保証金分担金)を支払えば、所定の機関へ営業保証金を供託する必要はありません。
現在、宅地建物取引業保証協会は、以下の二つが指定されていますが、この保証協会にはいずれか一方にしか加入できません。
★(公益社団法人)全国宅地建物取引業保証協会
https://www.hosyo.or.jp/
★(公益社団法人)不動産保証協会
https://www.fudousanhosho.or.jp/
保証協会への加入は、保証協会の社員になり得る資格、会費等の規定もあり、入会審査等に日数を要します。おおむね2か月程度とされていますので、加入を希望する場合は、できるだけ早く協会に加入申請した方が良いでしょう。
なお、加入の際は、別途、入会金(加入金)等が必要(数十万円)となります。
- 弁済業務保証金分担金の納付額
以下を納付します。
区分 | 納付額 |
---|---|
主たる事務所(本店) | 60万円 |
従たる事務所(支店等) | 30万円 |
※従たる事務所は、1店舗あたりです。複数の店舗を出店する場合、その数の分、供託金が必要です。
まとめ
今回は、具体的な申請手続きについて解説しました。
なるべくスムーズに手続きを進め、営業を開始するには、行政書士などの専門家のサポートが有効です。
当初の申請内容に変更が生じた場合にも新たに変更の申請が必要ともなります。適切なアドバイスを受けながら、営業開始に備えましょう。