地方に移住して事業を引き継ぐ~【事業承継】の最適な方法とは~

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地方に移住する場合、Uターンで帰るケースも少なくないかもしれません。もし親御さんが事業を営んでいるとすれば、その事業を継ぐために帰る、ということもあるかと思います。

いわゆる事業承継の事例ですが、国は中小企業の事業承継を後押ししており、様々な支援策を用意していますので、簡単にご紹介します。

事業承継とは

事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことをいいます。
現在、経営者の高齢化によって多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えていますが、後継者の不在を理由に廃業を余儀なくされることが少なくありません。

日本企業のうち99%を占める中小企業は、日本を支える重要な役割を担っていますが、近い将来、その多くが廃業し、地域の雇用が奪われ、培ってきた技術力も散逸する危機にあります。。日本が将来にわたって発展していくため、中小企業の事業承継は重要な取り組みです。

中小企業を取り巻く課題

日本社会全体がそうであるように、中小企業の経営者も高齢化が急速に進んでいます。経営者年齢のピークはこの20年間で50代から60~70代へと大きく上昇していると言われています。
また、地方では若者ばかりでなく、働き盛りの40~50代の労働力も不足しています。このため、中小企業、特に少人数で経営してきた企業については、後を引き継ぐ人がいないという事例も多い状況です。

他方、事業承継による世代交代やM&Aによる規模拡大は、企業の成長にとっても地域の活性化にとっても非常に効果的です。日本全体の再生のためには中小企業の活力の維持・発展が不可欠と言われており、そのために事業承継は必須です。

人口減少が進む中、事業承継は待ったなしの重要なテーマです。

事業承継の種類

事業承継は、引き継ぐ先によって、親族内承継、従業員承継、M&A(社外への引継ぎ)に分類されます。

A
親族内承継
現経営者の子をはじめとした親族に承継
・心情面や、長期間の準備期間確保がしやすい、相続等による財産・株式の後継者移転が可能といった背景から所有と経営の一体的な承継が期待できます。
B:
従業員承継
「親族以外」の従業員に承継
・経営者能力のある人材を見極めて承継することができます。
・長期間働いてきた従業員であれば経営方針等の一貫性を期待できます。
C:
M&A
(社外への引継ぎ)
社外の第三者(企業や創業希望者等)へ株式譲渡や事業譲渡により承継
・親族や社内に適任者がいない場合でも広く候補者を求めることができます。
・現経営者は会社売却の利益を得ることができます。

上記のうち、Uターン等して事業承継する場合、AまたはCに該当することが多いかと思います。

事業承継の進め方

「親族内承継」「従業員承継」「M&A」について、以下の事柄を検討し、解決する必要があります。Uターン等で事業承継する場合、AまたはCについて検討することになります。

A.親族内承継の場合

  • 経営状況の確認や、承継に向けた課題の把握
  • 関係者の理解
  • 株式・事業用資産の相続・贈与
  • 経営者保証の解除
  • 経営革新に向けた取組

B.従業員承継の場合

  • 経営状況の確認や承継に向けた課題の把握
  • 関係者の理解
  • 後継者の育成
  • 株式・事業用資産の買取り/相続・贈与
  • 経営者保証の解除
  • 経営革新に向けた取組

C.M&Aの場合

  • 経営状況の確認や承継に向けた課題の把握
  • 企業価値評価・マッチング
  • 交渉(基本合意・デューディリジェンス等)
  • 株式・事業用資産の買取り/相続・贈与
  • 経営革新に向けた取組

A~Cのいずれのパターンについても、様々な関係者(社内などの人のほか、取引先なども含む)との調整も必要になってきます。具体的な進め方については、専門家への早期の相談が安心です。
都道府県には「事業承継・引継ぎ支援センター」が設置されており、専門家による無料の支援を受けることができますので活用してみては如何でしょうか。

支援策

事業承継については、国も喫緊の課題として協力に推進しており、様々なサポートを受ける体制が整っているともいえます。各種支援についてご紹介します。

事業承継の相談など

全国47都道府県で、事業承継全般に関する相談対応や事業承継計画の策定、M&Aのマッチング支援などを原則無料で実施しています。
具体的な事例についてじっくり相談することができますので、ぜひ一度、アポイントを取ってみてください。

補助金など

資金面でのサポートも用意されています。中小企業診断士などの専門家に相談してみてください。

事業承継・引継ぎ補助金

経済産業省の補助事業です。M&A時の専門家活用費用や事業承継・引継ぎ後の設備投資や販路開拓、設備廃棄費用等を支援してくれるもので、資金面で役立ちます。
補助の枠は「経営革新枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」が用意されており、ニーズに応じて申請します。

 ◇経営革新枠
 ・親族内承継を実施した(又は検討している)
 ・M&A等によって経営を引き継いだ(又は検討している)
 ・事業承継やM&A後の、自社の取り組み費用を補助してほしい
 ・設備導入や販路開拓など、新たな事業展開を検討している

◇専門家活用枠
 ・近い将来でM&A(会社や事業の売却や買収)を検討している
 ・関係先等からM&Aの提案を受けている
 ・M&Aに向けて専門家(FAや仲介業者)と契約をしている
 ・M&Aに際して、専門家に払う費用を補助してほしい

◇廃業・再チャレンジ枠
 ・2020年以降、M&Aによって会社や事業を売却しようとした
 ・現段階で、売却の目途は立っておらず、会社の廃業を考えている
 ・会社を廃業する際の費用を補助してほしい
 ・会社を廃業したら、新たに法人を設立したり事業を興すなどのチャレンジをしたい

申請方法⇒
 ・特定のシステム=ジェイグランツといいます のIDを取得します。
 ・法人であれば謄本、個人であれば住民票などの必要書類を取得します。
 ・補助事業計画を立案します。
 ・システム上で申請書類へ記入し申請します。

申請まで、中小企業診断士や商工会議所などの専門家に相談した方が良いでしょう。

参考:M&A支援機関登録制度
事業承継・引継ぎ補助金で仲介手数料やフィナンシャルアドバイザー費用が補助対象となる、登録支援機関を検索できます。

税制

税金の面でも国の制度としてサポートがあります。詳しくは税理士、公認会計士に相談してみてください。

法人版事業承継税制(特例措置)

非上場の株式等の承継に伴う贈与税・相続税の負担を実質ゼロとする特例措置です。2024年3月までに特例事業承継計画を提出し、2027年までに事業承継を実施する必要があります。
申請マニュアル申請手続関係書類

法人版事業承継税制(一般措置)
非上場の株式等の承継に伴う贈与税・相続税の負担軽減措置です。

個人版事業承継税制
個人事業主の特定事業用資産の承継に伴う贈与税・相続税の負担を実質ゼロとする特例措置です。2024年3月までに個人事業承継計画を提出し、2028年までに事業承継を実施する必要があります。

経営資源集約化税制
設備投資減税、雇用確保を促す税制、準備金の積立の3つの措置を活用できます。

登録免許税・不動産取得税の特例
M&A時の不動産の権利移転にかかる登録免許税・不動産取得税を軽減するものです。

金融支援(融資、信用保証)

事業承継に特化し、融資などを受けることもできます。調整などを専門家に頼ると良いかもしれません。

日本政策金融公庫等の融資、信用保証等
株式の買い取りや相続税の支払いなど承継時に必要となる各種の資金に対して融資や信用保証を受けることができます。

事業承継を支援する関係機関

国のサポートのほか、様々なプロが事業承継の手助けをしています。困った際は頼る方が良いでしょう。

日本弁護士会連合会
弁護士は、依頼者のために、親族内・従業員・第三者(M&A)承継が円滑に実現するよう、交渉や契約書作成に携わります。

日本税理士会連合会
税理士は、株価の評価、生前贈与や種類株式の発行その他事業承継税制の活用など、相続税、贈与税に関する助言等を行っています。

日本公認会計士協会
公認会計士は、財務に関する調査や相談を通じ、企業価値評価、承継スキームの立案、M&Aの実施、PMI等をサポートします。

日本司法書士会連合会
司法書士は、商業登記、不動産登記等の相談を通して、事業承継における株式及び事業用不動産の承継、M&A、種類株式及び民事信託の活用についてサポートしています。

日本行政書士会連合会
行政書士は、事業承継時の許認可の承継等をサポートします。

中小企業診断協会
中小企業診断士は、事業承継診断や、事業承継計画の策定、後継者教育、ポスト承継等に関わる様々なサポートを行います。

まとめ

Uターンなどで地元に帰り事業を引き継ぐ場合について、国の支援策を中心に解説しました。事業承継は一筋縄ではいかず、様々な支援を受けながら進めていくことが成功につながります。

地元の商工会議所なども強い味方ですが、中小企業診断士や公認会計士などの専門的な視点からのサポート、行政書士の申請時のサポートを受けるなど、色々な人の援助を受けながら、スムーズな事業継承を進めてください。

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